この記事の要約
買ったばかりの寒色系のシュシュを髪に結んだ早朝、鏡に映る姿に少しだけ戸惑ったエピソード。いつもは元気なビタミンカラーばかり選ぶ私が、秋の冷たい空気の中で新しい色に馴染んでいくまでの心の動きを言葉にしてみました。慣れないことも、ちょっとした勇気と私らしいリズムで受け入れていく過程をまとめています。
ボリュームたっぷりのミントグリーンと、鏡の中の小さな戸惑い
目覚まし時計が鳴る少し前、窓の隙間から入り込む空気がひんやりとしていて、すっかり秋が来たことを教えてくれます。カーテンの隙間から差し込む光も、真夏の刺すような強さから、少しだけ柔らかいものへと変わっていました。午前6時。いつものように基礎練習のストレッチを始める前に髪をまとめようと、昨日買ってきたばかりのミントグリーンのシュシュを手に取りました。昨日の夕方、レッスン帰りにふらっと立ち寄った雑貨屋さんでのこと。入り口近くのワゴンに並んでいた秋の新作アクセサリーの中で、ひときわ目を引いたのがこのアイテムでした。お店の温かみのあるオレンジ色の照明の下で見たときは、そのふんわりとした色合いと、サテン生地が放つ上品なツヤにすっかり心を奪われてしまったんです。「これをつければ、少し大人っぽい秋のスタイルになれるかも」なんて、ワクワクしながらレジに持っていきました。

でも、いざ髪を高い位置でポニーテールに結んでみると、鏡に映る私がなんだか少しだけよそよそしく感じてしまいました。いつもなら迷わずオレンジやイエロー、パッと目を引く元気なビタミンカラーを選ぶところです。クローゼットの中を見渡しても、見ているだけで元気になれるような明るい色で溢れています。だからこそ、街路樹の葉が少しずつ色づき始めるこの季節の変わり目に、「たまには少し大人っぽい色にも挑戦してみたいな」なんて、ちょっと背伸びをして選んだアイテムでした。
たっぷりとしたサテン生地のボリュームが、笑顔いっぱいで走り回る普段の私には少しおしとやかすぎる気がして、首を傾げながら何度か結び直してしまいます。右に少しずらしてみたり、結ぶ位置を高くしてみたり。前髪の流し方を変えてみても、どうしても「いつもの私」とは違う気がして、鏡の前で小さくため息をついてしまいました。買ったばかりの嬉しさが、ほんの少しの戸惑いに変わってしまった瞬間でした。
ベランダの冷たい風と、送信ボタンを押せなかった写真
「んー、やっぱりいつものコーラルピンクに戻そうかな……」と迷いながら、一旦そのままの髪型でベランダに出ました。外の空気に触れると、北海道の雪の匂いを思い出すような、ツンと冷たい秋の風が頬を撫でていきます。小さな頃から、この冷たい空気に触れると不思議と頭の中がクリアになっていくんです。遠くの空はまだ薄暗く、街も静まり返っている時間。深く深呼吸をしてからスマホを取り出し、SNSを開きました。
「新しいシュシュでおはよう!」って、明るいテキストと一緒に写真をアップしようとしたけれど、カメラアプリに映る私の表情がどこかぎこちなくて、やっぱりしっくりきません。何度か角度を変えてシャッターを切ってみたものの、画面の中の私は、新しい色に「着られている」ような気がしてしまったんです。結局、送信ボタンを押す前にそっとアプリを閉じました。
コミュニティでいつも応援してくれるみんなは、きっと「似合ってるね!」「新鮮だね!」って優しい言葉をかけてくれるはずです。みんなの温かさは、私が一番よく知っています。でも、私自身がこの色を心から楽しめていないまま、ただ「新しいものを買ったから」という理由で発信するのは、なんだか嘘をついているようで違う気がしたんです。トップアイドルを目指すなら、作り笑いじゃない、本当にワクワクしている私を届けたい。何気ない日常の切り取りであっても、心から「これ、すごくいいでしょ!」って言える瞬間を共有したいから。こんなふうに「今の私に似合うかな?」と立ち止まる時間も、きっと大切なステップの途中なんだと思います。背伸びをした姿を無理にアピールするのではなく、ちゃんと私の一部になるまで待つことも、今の私に必要なことなのかもしれません。
イヤホンから流れるアップテンポと、風に溶けていく迷い
気を取り直して、そのままの髪型で近所のパン屋さんまで軽いジョギングに出かけることにしました。スニーカーの靴紐をキュッとしっかり結んで、お気に入りのアップテンポな曲をイヤホンから流します。じっと鏡の前で悩んでいるよりも、思い切り身体を動かして前に進む方が私らしい解決方法だと思ったからです。玄関のドアを開けると、さっきベランダで感じたよりもさらに澄んだ空気が全身を包み込みました。

リズムに合わせてアスファルトを蹴るたび、頭の後ろでふわり、ふわりとミントグリーンのシュシュが揺れるのを感じました。サテン生地の軽やかな感触が、走るリズムと少しずつ合わさってきます。冷たい風に背中を押されながら走っていると、さっきまで部屋の中で抱えていた小さな迷いが、少しずつ秋の風に溶けていくような気がしました。いつもと違う色を身につけているからこそ、普段通りの街の景色もなんだか新鮮に見えてきます。
すれ違う人たちの秋服や、少しずつ色を変え始めた街路樹。新しい色に挑戦したことで、私のアンテナがいつもより少しだけ広く張られているのかもしれません。走りながら、頭の中では次の曲の振り付けのアイデアが浮かんでは消えていきます。じっとしていると気になってしまうことも、こうして体を動かしながら風を切っていると、不思議と「まあ、いっか」と思えるから不思議です。アップテンポなビートに身を任せているうちに、私の心も少しずつ軽くなっていきました。
ショーウィンドウに映る影と、新しい色を受け入れるリズム
ふと、通り過ぎたカフェの大きなショーウィンドウに私の影が映り込みました。元気に走る姿と、秋の澄んだ空のような冷たい色のシュシュ。不思議なことに、さっき部屋の鏡の前で感じた違和感はすっかり消えていて、むしろ今の季節にぴったりの軽やかさを持っていることに気がついたんです。立ち止まってガラス越しの自分に微笑みかけると、「あ、なんかいいかも!」と思わず声に出して笑ってしまいました。静かに鏡の前に立っている時よりも、こうして動いている時の方が、ずっと私らしく見えたんです。
最初はどう扱っていいか分からなかった新しい色も、思い切り身体を動かして、私らしいリズムに巻き込んでしまえば、ちゃんと馴染んでくれる。お母さんと手作りする次の衣装にも、こういう爽やかな寒色をポイントで入れてみるのも面白いかもしれません。いつも通りの元気な私に、ほんの少しの新しい風を足していく。完璧に計算されたスタイルじゃなくても、走りながら私らしさに変えていく過程そのものが、私なりの表現なんだと思います。
パン屋さんに着く頃には、すっかりこのミントグリーンがお気に入りになっていました。焼きたてのクロワッサンの香りに包まれながら、今度こそ心から笑っている私の写真を撮れるような気がしたんです。帰り道はいつもより少しだけ歩幅を広くして、軽やかになった足音を楽しんでいました。明日もまた、このシュシュと一緒に新しいリズムを刻んでいこうと思います。
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