この記事の要約
10月の始まりに衣替えをしていたら、引き出しから派手な色の靴下がたくさん出てきました。北海道の雪深い町で育った頃、重たい冬靴の中に隠して履いていた秘密のカラフルな靴下たち。誰の目にも触れなくても、足元だけはアイドルでいるための大切な魔法でした。今はその原色を堂々と見せて、ファンのみんなとワクワクを共有できている。そんなお気に入りの相棒たちと過ごす、秋の始まりの出来事です。
引き出しの奥で待っていた、色とりどりの小さな相棒たち
10月1日。カレンダーをめくると同時に、空気が急にひんやりとした秋の温度に変わりました。半袖では少し肌寒く感じるこの季節の変わり目が、私は結構好きです。今日は思い切って夏服をしまって秋服を出すことに決め、窓を大きく開けて涼しい風を部屋に入れながら、クローゼットの奥から大きな衣装ケースを引っ張り出しました。キャスターがフローリングを転がるカラカラという音が、新しい季節の始まりを告げているようで、なんだか少しワクワクしてきます。

ケースの蓋をパカッと開けると、そこにはまるで絵の具箱をひっくり返したような光景が広がっています。レモンイエロー、フラミンゴみたいな鮮やかなピンク、ミントグリーンに、太いボーダー柄や大きな水玉模様。私のワードローブの中で一番の面積を占めている、大好きな靴下たちです。一つひとつ手に取っていくと、買った時の弾むような気持ちまで一緒に蘇ってきます。
普段着る服やレッスン用のウェアは、動きやすさ重視で意外とシンプルなものが多いのですが、足元だけはどうしても派手にしたくなってしまいます。休日に街へ出かけてお店で買い物をしている時も、流行りの服より先に靴下のコーナーへ吸い寄せられてしまうのが昔からの癖。今日こうして整理して数えてみたら、ゆうに五十足は超えていて、思わず一人で笑ってしまいました。全部を床に並べてみると、六畳の部屋がまるでお花畑みたいに賑やかになります。太陽の光を浴びてキラキラと輝く色たちを見ているだけで、私まで元気をもらえる気がします。
私なりの「靴下を選ぶ時の小さなルール」がいくつかあります。
- 落ち込んでいる朝は、あえて一番派手な蛍光色を選ぶこと
- 新しいステップの練習日は、左右で違う柄を履いて遊び心を入れること
- 大切な撮影の日は、お母さんが作ってくれた衣装のどこかの色とリンクさせること
真っ白な通学路と、重たいブーツの中で燃えていた秘密の体温
この派手な靴下集めには、実はちょっとした理由があります。私が育った北海道の町は、冬になると見渡す限りの銀世界。通学の時は、冷たい風を防ぐための分厚い黒のダウンコートに、氷の上でも転ばないように底の厚い地味なスノーブーツを履くのが当たり前でした。外から見れば、みんな同じようなもこもこの雪だるま状態です。
だけど、どうしてもテレビの中のキラキラしたアイドルに憧れていた私は、その重たいブーツの中に、とびきり派手な色の靴下を忍ばせていました。分厚い生地と長いブーツに守られて誰の目にも触れない場所だけれど、足元だけはいつでも華やかなステージに立てるように準備をしている気分だったのです。真っ白な雪道を踏みしめるたびに、ブーツの中にある鮮やかな色を想像して、一人でニヤニヤしていました。
それでも、時には「現実みなよ」「こんな田舎からアイドルになんてなれるわけない」と冷たい言葉をかけられて、帰り道に悔しくて下を向いてしまった日もあります。落ち込んだまま玄関に座り込んでブーツを脱ぐと、隙間からほんのわずかに蛍光ピンクの布地が覗いている。その鮮やかな色が目に飛び込んできた瞬間、私の中のエンジンが再びカチッと音を立てて回るのを感じました。冷え切ったつま先から、じわじわと熱いものが全身に巡っていくような感覚。それは、誰にも奪われない私だけの熱量でした。
お母さんがいつも言ってくれた「笑ってる人のところに夢は来る」という言葉。それを信じ抜くために、足元から無理やりにでも体温を上げて、笑顔を作るためのスイッチが必要だったのです。私にとって派手な靴下は、ただのファッションアイテムではなく、どんな時も心を折らないための秘密の武装だったのだと、今になって強く思います。
裾から覗く原色が、画面の向こうに届ける新しいワクワク
そんな風にこっそり隠していた私の「好き」は、今では堂々と表に出るようになりました。毎日更新しているSNSにアップする全身の写真や、新しいステップの練習風景を映した動画。そこには必ず、私の足元で元気に主張するカラフルな相棒たちが映っています。もう分厚いブーツで隠す必要はありません。スニーカーから覗く鮮やかな色は、私が私らしくいるための大切なサインです。

コメント欄を開くと、「今日の靴下、めっちゃ元気出る色だね!」「りんちゃんの影響で、私も派手な靴下買っちゃった」「足元が明るいと、動画全体がキラキラして見える!」という言葉が並んでいます。それをもらうたびに、胸の奥がぽかぽかと温かくなるのを感じます。雪深い町で一人きりで履いていた色が、画面を越えて誰かの日常をほんのちょっとカラフルにしている。それは、駆け出しの私にとって信じられないくらい嬉しくて、奇跡みたいな出来事です。私が発した小さな熱が、誰かの心を温める火種になっているのかもしれない。そう思うと、もっともっとたくさんの色を届けていきたくなります。
ステージ衣装を一緒に作ってくれるお母さんも、最近は私の靴下の色に合わせて、スカートの裾に小さなリボンをつけてくれたり、髪飾りに同じ色のビーズを縫い込んでくれたりするようになりました。かつては冷たい風から夢を守るために隠すものだった原色が、今は私らしさを表現して、みんなと繋がるための一番の武器に変わっています。
つま先の小さなほつれと、明日へ続くカラフルな足跡
床に広げた靴下たちを丁寧に畳んでケースに戻していると、一番お気に入りだったオレンジ色と水色のボーダー靴下のつま先に、小さなほつれがあるのを発見しました。何度も洗って、何度も激しいステップの練習を一緒に乗り越えてきた証拠です。生地も随分と薄くなっていて、かかとの部分も少し擦り減っています。普通なら「今までありがとう」と言って捨ててしまうタイミングかもしれません。
でも、どうしても手放す気になれず、私は立ち上がって裁縫箱からオレンジ色の糸を取り出しました。お母さんに教わった通りに丁寧な玉結びを作って、チクチクと穴を塞いでいきます。針を進めるたびに、この靴下を履いてオーディションに向かった日のことや、初めてファンの方から温かい言葉をもらって飛び跳ねて喜んだ日のことが思い出されました。糸を引くたびに、過去の私が今の私にバトンを渡してくれているような不思議な安心感に包まれます。
不器用な私が縫った跡はちょっといびつで、お店で売っているような綺麗な仕上がりにはなりません。でも、それもまた私とこの靴下が一緒に過ごしてきた新しい模様みたいで悪くありません。完璧じゃなくてもいい。不格好でも、愛情をかけて大好きなものと一緒に前に進んでいけばいいのだと、小さな縫い目が教えてくれている気がしました。
繕い終わった靴下を指に被せてピンと張ってみると、太陽の光に透けて、なんだか明日もいい日になりそうな予感が胸いっぱいに広がります。さて、今日はどの色を履いて出かけようかな。秋の涼しい風に負けないくらい、とびきり元気な色を選んで、お気に入りのスニーカーの紐をぎゅっと結んで。誰かを笑顔にするための新しいステップを踏み出しに行こうと思います。
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