この記事の要約

朝のダンス練習を終えて立ち寄ったカフェで、昔から苦手だった無花果のタルトにふと惹かれた日の記録です。子供の頃は理解できなかった複雑な甘さと食感が、今の私には驚くほど美味しく感じられました。一口で伝わる分かりやすい元気さだけではなく、噛み締めるほどにゆっくりと広がる奥深い魅力もあること。自分の好き嫌いや感性が少しずつ更新されていく面白さと、そこから見つけた新しい表現のヒントについて綴っています。

ショーケースの隅の赤紫色と、予定外のオーダー

朝5時、まだ薄暗い部屋の窓ガラスに自分の姿を映しながら、何度も同じターンの練習を繰り返しました。思い通りに体が動かなくて、何度も床を蹴り直し、気がつけばTシャツが汗でぐっしょりになるほど。そんな風に自分ととことん向き合った日の午後は、大好きなスイーツ巡りをして、心と体に甘いご褒美をあげるのが私の大切なルーティンです。頑張った自分をちゃんと褒めてあげることで、また明日も全力で笑顔になれる気がするからです。

りん本人と「アンティークローズの無花果と、ゆっくり広がる新しい私の輪郭」の内容を表すブログ挿絵
りん本人の雰囲気と記事の情景

今日訪れたのは、駅から少し歩いた路地裏にある、アンティーク調の木の扉が可愛い小さなカフェ。ドアを開けた瞬間に鼻をくすぐる、バターが焦げたような甘く香ばしい匂いと、エスプレッソマシンの低い稼働音。その空間に足を踏み入れるだけで、ピンと張り詰めていた朝の緊張感がふわりと解けていくのを感じます。

いつもなら、ショーケースの前に立った瞬間、私の目は一番明るい色を探しています。真っ赤なイチゴが王冠のように乗ったショートケーキや、ツヤツヤのベリーが山盛りにされたタルト。見ているだけでパッと心が晴れるような、元気で鮮やかな色のスイーツを選ぶのが、私の揺るぎないルールでした。でも今日は、なぜか違ったのです。端っこの方でひっそりと並んでいた、くすんだ赤紫色のケーキから、どうしても目を逸らすことができませんでした。

遠い記憶のなかの「苦手」と、封印を解く一口

それは、無花果のタルトでした。落ち着いたアンティークローズのような色合いの果肉が、花びらのように何層にも重なって綺麗に並べられています。決して派手ではないし、遠くから見て目立つわけでもない。けれど、照明の光を吸い込むようなしっとりとした質感が、どこか大人びた不思議な魅力を放っていて、私の心を強く惹きつけました。

実を言うと、私は無花果がずっと苦手でした。北海道の実家で暮らしていた小学生の頃、母が「近所の人から珍しい果物をもらったよ」と嬉しそうに出してくれた日のことを、今でもはっきりと覚えています。外は本格的な雪が降り始め、ストーブの暖かさでポカポカになったリビング。母が淹れてくれた温かい紅茶と一緒に、甘いケーキやフルーツを期待して大きな口を開けた私は、その控えめな甘さと、口の中に残る独特の種の感触に、すっかり戸惑ってしまいました。あの頃の私にとって、スイーツというのは飛び上がるほど甘くて、わかりやすくハッピーな気持ちにしてくれる魔法の食べ物だったからです。

「なんか、甘くないし、つぶつぶしてて変な感じ」と、子供ならではの素直すぎる感想をこぼして、一口だけでフォークを置いてしまった私。母は「美味しいのにねえ、もったいない」と笑いながら私の分まで食べてくれましたが、それ以来、私の中で無花果は「選ばなくていいもの」「私には合わないもの」という箱の中に、しっかりと封印されたままでした。それなのに、今日の私はなぜか「今の私なら、これを美味しく食べられる気がする」と、根拠のない確信を抱いていたのです。

分かりやすい魅力と、ゆっくり広がる奥深さ

窓際の明るい席について、運ばれてきたタルトにそっとフォークを入れます。タルト台のサクッという心地よい音と一緒に切り取った一口を口に運ぶと、昔の記憶が完全に上書きされるほどの驚きが広がりました。果肉のしっとりとした上品な甘さと、ほんの少しの酸味。そこに、土台のアーモンドクリームの濃厚な香ばしさが絶妙に混ざり合います。そして何より、昔は邪魔だと思っていた種の食感が、むしろ楽しいアクセントになって、味わいに深い立体感を出していることに気がついたのです。

りん本人と「アンティークローズの無花果と、ゆっくり広がる新しい私の輪郭」の内容を表すブログ挿絵
りんが記事の中心的な場面を振り返る一枚

美味しい。心の中でそう呟きながら、私は自分の味覚の変化に驚いていました。昔の私は、「一口目から100パーセント甘い!」と叫びたくなるような、分かりやすい味だけが正解だと思っていました。それは、自分のダンスや表現のスタイルにも似ているかもしれません。とにかく元気に、大きく、誰が見てもパッと明るい気持ちになれるような笑顔とステップ。それが私の最大の武器であり、絶対にブレたくない軸として、毎朝の猛特訓でもひたすら磨き続けてきたものです。

でも、分かりやすさだけがすべてじゃないんだと、無花果の複雑な甘さが教えてくれた気がしました。一口目ですべてが伝わるストレートな魅力も素晴らしいけれど、噛み締めていくうちにじわじわと顔を出してくる隠し味のような魅力もある。派手なジャンプやターンの合間に見せる、少し引いた表現や、あえてピタッと止まって余韻を残すようなステップ。元気いっぱいの明るさの奥に、そういう静かな深みを持たせることができたら、私のパフォーマンスはもっと立体的で面白くなるのかもしれない。タルトを味わいながら、そんな新しい表現の扉をノックしている自分に気づき、胸が高鳴るのを感じました。

変わっていく感性を面白がる午後

じわじわと後から追いかけてくるような魅力や、少しだけ奥にある面白さ。すぐには伝わらないかもしれないけれど、見ている人の心にゆっくりと染み込んでいくような表現も、今の私なら少しずつ取り入れていけるのかもしれない。そんなことを考えながら、最後の一口をゆっくりと飲み込みます。口の中に残る微かな香ばしさと一緒に、なんだか自分が少しだけアップデートされたような、誇らしい気持ちになりました。

「私はこれが好き」「これは苦手」と、過去の記憶だけで自分の枠を固めてしまうのは、すごくもったいないことですね。時間が経ち、色々な経験を重ねていけば、感じることも、受け取れるものも確実に変わっていく。その変化を恐れずに、むしろ「今日の私は何を楽しめるだろう」と面白がれる心の余裕を、これからもずっと持っていたいなと思います。

明日の朝の練習では、いつもより少しだけテンポを落とした曲をかけてみようと決めました。元気いっぱいに飛び跳ねるだけじゃなく、じっくりと音の余韻を味わうような、新しいステップの形を探してみるつもりです。変わらない私らしさの根っこの上に、今日見つけた「新しい好き」を一つずつ重ねていく。そうやって少しずつ更新されていく自分の感性を大切に育てていけば、いつか応援してくれるファンのみんなにも、もっと色んな表情の私を見せられるはず。そんな未来の自分へのワクワクを胸に抱きながら、すっかり空っぽになったお皿を眺め、カフェの温かな空気を胸いっぱいに吸い込んだ午後のひとときでした。

りん

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りん

明るく天真爛漫。ファンを大切にし、常に前向き。夢に向かって努力する姿勢を見せ、周りを元気にする。

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