この記事の要約

普段なら明日の朝5時起きに備えて、とっくに眠りの海に潜っている夜10時半。ふと思い立って広げたラベンダー色のヨガマットは、端っこがくるんと内側に丸まって床から浮いていました。その癖を逆巻きにして直しながら待つ静かな時間は、いつも全力で走っている私には少し珍しい空白です。無理に引き伸ばさず、ゆっくりと床に馴染んでいくマットを見つめながら、自分の焦りや成長のペースについて静かに見つめ直した、小さな夜の記憶です。

夜10時半のラベンダー色と、小さな反発

いつもなら明日の朝5時のアラームに備えて、とっくにベッドの中で夢の準備を始めている時間帯。でも今夜は、なんだか足の裏に一日の疲れがぎゅっと詰まっているような感覚があって、部屋の隅に立てかけてあるラベンダー色のヨガマットに手を伸ばしました。外はすっかり静まり返っていて、車の通る音すら聞こえない秋の夜長。少しだけ冷たくなったフローリングの上に、くるくるとマットを広げていきます。

りん本人と「丸まったラベンダー色の端っこと、夜10時半に伸ばす見えない根っこ」の内容を表すブログ挿絵
りん本人の雰囲気と記事の情景

いつもの朝のストレッチなら、サッと広げてすぐに乗り込んでしまうので気にも留めません。アップテンポな曲をかけて、元気いっぱいに体を動かす朝は、細かいことなんて気にならないからです。けれど、静かな夜の空気の中でゆっくりと広げたマットは、端っこが内側にくるんと丸まり、床から数センチほど浮き上がっているのが妙に気になりました。毎日きつく巻いて収納しているからこそ、どうしてもついてしまう形状記憶の癖。普段の私なら、足でポンと踏みつけて「乗っちゃえば重さで平らになるし!」と笑い飛ばしてしまうところです。

でも、今夜はなぜか、その小さな反発を力技で押さえつけるのではなく、きちんと向き合って直してあげたい気分になりました。部屋の明かりを少しだけ暗くして、床にしゃがみ込みます。丸まった端っこを指先でなぞると、弾力のあるウレタン素材が、元の形に戻ろうとする小さな意地を張っているように感じられました。

逆巻きにして待つ、無音の5分間

浮き上がっている端っこを両手で掴み、今度は外側に向かってきつめに巻き直します。そのまま手を離すとまたくるんと戻ってしまうので、両手で筒状になったマットをぎゅっと押さえたまま、しばらくじっと待つことにしました。手首から伝わってくる、マットが元に戻ろうとする微かな力。それを優しくなだめるように、体重を少しだけかけて押さえ込みます。

部屋の中は完全な無音。時計の秒針が進むカチカチという音と、自分のゆっくりとした深呼吸だけが静かにリズムを刻んでいます。常に「次はどう動こう」「どんな言葉でみんなを笑顔にしよう」と頭をフル回転させ、少しでも前に進もうと走り続けている私にとって、こうして「ただ待つだけ」の時間は、なんだかとても不思議で贅沢な空白でした。

自分の心にも、こういう頑固な丸まりができてしまうことがあるなと、ふと考えます。早く完璧な自分になりたくて、焦りから心がくるんと内側を向いてしまう瞬間。たとえば、こんなときです。

  • 配信でうまく言葉が出てこなくて、明るい声の裏で空回りしてしまったとき
  • 新しい振り付けのカウントが、何度練習してもどうしても体に入ってこないとき
  • 遠くの大きなステージで輝く同世代の子を見て、自分の歩幅がひどく小さく思えたとき

そういうとき、私はいつも「もっと頑張らなきゃ」「立ち止まってる暇なんてない」と、無理やり自分を引き伸ばそうとしてきました。オーディションに落ちて泣いた高校生のあの日から、立ち止まることが何より怖かったからです。でも、こうして手のひらの下で少しずつ反発する力が弱まっていくのを感じていると、力任せに引っ張るのではなく、こうして逆の力をかけて、ただ静かに待つ時間も必要なのだと気づかされます。

雪の夜の記憶と、根っこを伸ばす時間

じっと床を見つめていると、ふと北海道の実家にいた頃の、雪がしんしんと降る夜の情景が蘇ってきました。外は真っ白な吹雪で、一歩も家から出られない冬の夜。狭い自分の部屋で、窓ガラスを叩く風の音を聞きながら、ただひたすらストレッチをするしかなかったあの時間。

りん本人と「丸まったラベンダー色の端っこと、夜10時半に伸ばす見えない根っこ」の内容を表すブログ挿絵
りんが記事の中心的な場面を振り返る一枚

当時の私は「こんなところで閉じこもっていたら、夢なんて絶対に叶わない」「東京にいる子たちは今も広いスタジオでレッスンをしているのに」と、見えない誰かと比べて焦ってばかりいました。焦燥感でいっぱいのままリビングに行くと、ストーブの前で母が温かいお茶を飲みながら編み物をしていて、「雪が降ってる間はね、動けないんじゃなくて、見えないところで根っこを伸ばす時間なんだよ」と笑ってくれたことを思い出します。

あのときは「根っこなんて地味なものより、早く花を咲かせたい!」と唇を尖らせていたけれど、今ならその言葉の本当の意味が少しだけわかる気がします。目に見える大きな前進がなくても、こうして静かに自分の癖やこわばりと向き合い、ゆっくりと平らにしていく時間は、決して無駄な停滞ではない。次に大きくジャンプするための、大切な準備なのだと。

少しだけ床に近づいた端っこと、明日のための深呼吸

5分ほど経ったでしょうか。そっと両手を離してみると、マットの端っこは完全に真っ平らとはいかないまでも、さっきよりはずっと床に近くなり、素直でなだらかなカーブを描いていました。まだ少しだけ浮いているけれど、もう無理に反発してくるような強さはありません。

その少しだけ不格好な端っこを、裸足の足の裏で踏みしめてみます。ペタッという心地よいウレタンの感触が、足の指先からじんわりと伝わってきました。完璧な真っ平らじゃなくてもいい。こうして少しずつ自分のペースで馴染ませて、また明日、その上で踊ればいい。そう思うと、肩に入っていた余計な力がふっと抜け、足の裏の疲れもどこかへ溶けていくようでした。

明日の朝5時、アラームが鳴ったら、またこのマットの上で新しいステップを踏み始めます。そのときはきっと、今日よりも少しだけ足の裏が床に吸い付いて、強く、高くジャンプできる気がします。夜の静寂が教えてくれた、焦らないための小さな魔法。ラベンダー色のマットの上で、最後に大きく一度だけ深呼吸をして、今度こそ明日のための眠りにつくことにしました。

りん

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りん

明るく天真爛漫。ファンを大切にし、常に前向き。夢に向かって努力する姿勢を見せ、周りを元気にする。

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