この記事の要約
いつもなら夢の中にいる夜11時。これからの季節に向けた衣装のアイデアをスケッチブックに描いているうちに、すっかり時間が経っていました。短くなった赤茶色の色鉛筆を削りながら、ふと実家で母と夜遅くまで衣装作りをした日々を思い出します。思い通りにいかない手描きの線から生まれる偶然の可愛さや、ワクワクの種を抱えたまま眠りにつく喜び。たまにはこんな夜更かしも悪くないなと思えた、少しだけ特別な夜の出来事です。
普段なら夢の中にいる夜11時と、短くなった赤茶色の色鉛筆
いつもは朝5時に起きるのが私のマイルール。だから、時計の針が夜の11時を回る頃には、とっくにベッドの中に入って夢の準備をしているのが普通です。夜更かしは苦手で、夜になると自然とまぶたが重くなってしまうタイプなのですが、今夜はどうしても手元から意識が離れず、デスクのライトだけをつけて起きています。

机の上に広げているのは、使い込んで角が少し丸くなったお気に入りのスケッチブック。これからの季節に向けて、秋らしい衣装のアイデアを思いつくままに描き留めていました。きっかけは、今日SNSでいただいた「これからの季節はどんな服を着るの?」というコメントです。その言葉を目にした瞬間、頭の中にフリルの形やリボンの位置、少し厚手の生地が揺れる様子が次々と浮かんできて、どうしても今すぐ紙の上に落としておきたくなったのです。
頭の中のイメージを形にしていく作業は、一度スイッチが入ると止まりません。気がつけば、さっきまで指先をはみ出すくらい長かった赤茶色の色鉛筆が、手のひらにすっぽり隠れるくらい短くなっていました。普段の私なら「続きは明日の朝にしよう」とスパッと切り上げるところです。でも、今日だけはこのワクワクした集中力を途切れさせたくなくて、引き出しの奥から小さな鉛筆削りを取り出しました。
削りカスが作る小さな花びらと、思い通りにいかない線の面白さ
カリカリ、というリズミカルな音が、ひっそりとした部屋に響きます。色鉛筆を回すたびに、木と芯が薄く削り取られて、くるくるとカールしながら落ちていきます。その削りカスが机の上に集まると、まるで赤茶色の小さな花びらが幾重にも重なって咲いたみたいで、思わずふふっと笑ってしまいました。指先でそっと触れてみると、木の香りがふわりと漂ってきて、なんだか森の中にいるような不思議な気分になります。
スケッチブックに描く線は、デジタルのお絵かきツールのようにはいきません。間違えて引いてしまった線を取り消す魔法のボタンはないし、消しゴムを使ってもうっすらと跡が残ってしまいます。でも、その思い通りにいかないところが、今はなんだかとても愛おしく感じられました。まっすぐ引こうとしたのに少し震えてしまった線や、色が濃く出すぎてしまった部分。それらすべてが、今の私の体温をそのまま写し取っているような気がするからです。
さっきも、スカートの裾を描くときに手が滑って、予定よりも大きくはみ出してしまったんです。でも、そのはみ出した線をじっと見つめているうちに、「そうだ、ここを大きなプリーツにして、歩くたびに裏地の色が見えるようにしたらもっと可愛くなるかも!」とひらめきました。つまずきだと思った線が、一番のお気に入りポイントに変わる瞬間。それは、完璧じゃない手描きだからこそ出会えた奇跡みたいで、心がポカポカと温かくなりました。
オーディションに落ちて泣いていた昔の私も、きっとこの「はみ出した線」と同じだったのかもしれません。あの時は思い通りにいかなくて落ち込んだけれど、その経験があったからこそ、こうして毎日ファンのみんなに向けて全力で笑顔を届けることができる。寄り道やつまずきも、全部ひっくるめて私というデザインの一部になっているのだと思うと、なんだか無性に嬉しくなって、色鉛筆を握る手に少しだけ力が入りました。
母のミシンの音を思い出す、夜更けの魔法
赤茶色の色鉛筆でプリーツの影を丁寧に塗りつぶしながら、ふと北海道の実家で過ごした日々が頭をよぎりました。まだ私が中学生だった頃、地元の小さなイベントに出るための衣装を、母と一緒に手作りしていたあの時間です。お店に売っているような立派なドレスは買えなかったけれど、その代わりに、世界で一つだけの衣装を一緒に生み出す喜びがありました。

あの時も、気づけば夜遅くになっていて、ストーブの暖かさとミシンのカタカタというリズミカルな音が部屋を満たしていました。私が「ここにもっとリボンをつけたい!」「もっとキラキラさせたい!」と無茶なお願いをしても、母は「やってみようか」と笑って、布の切れ端を器用に縫い合わせてくれました。外は凍えるような寒さだったはずなのに、あの部屋の中だけはいつも熱気にあふれていて、夢に近づいていく実感で胸がいっぱいだったのを覚えています。
あの夜更けのワクワク感と、今スケッチブックに向かっているこの高揚感は、なんだかとてもよく似ています。「笑ってる人のところに夢は来る」という母の言葉。その言葉通り、あの頃からずっと、私は好きなことを考えるとき、無意識に口角が上がっている気がします。どんなに遠回りになっても、手作りで一歩ずつ進んでいくこの感覚が、私らしさなのだと改めて感じました。
今、私の周りにはミシンの音はありません。でも、SNSを通じて「楽しみにしてるね」と声をかけてくれるファンのみんなの存在が、あの時のミシンの音のように私を力強く前へ押し出してくれます。周りから見たらただの夜更かしでも、私にとっては、みんなとの約束を形にするための大切な魔法の時間なのだと気づきました。
明日へ続くスケッチブックと、少しだけ特別な夜の匂い
窓の隙間から、秋特有の少しひんやりとした風が入り込んできました。その風に撫でられて、ようやく「そろそろ寝なくちゃ」という現実に引き戻されます。明日の朝も、もちろん5時に起きてダンスの練習をするつもりです。だから、今日のスケッチはここまで。
描きかけの衣装デザインは、まだ完成には程遠い状態です。色も塗れていない部分がたくさんあるし、靴のデザインなんて手つかずのまま。でも、この「未完成」な状態を明日に持ち越すのも、なんだか悪くないなと思えます。夜のデスクライトの下で見る色と、朝の太陽の光の下で見る色はきっと違うはず。まっさらな朝の光の中でこのページを開いたら、また違ったアイデアが降ってくるかもしれないからです。
短くなった赤茶色の色鉛筆をペンケースに戻し、机の上の「花びら」をそっとゴミ箱へ。パチンとデスクライトを消すと、部屋は一気に暗闇に包まれ、さっきまでの熱気が少しずつ冷めていくのを感じました。暗闇の中で目を閉じると、色鉛筆の木の香りと、少し冷たい秋の風が混ざり合って、なんとも言えない心地よさに包まれます。
いつもより少しだけ短い睡眠時間になりそうだけど、明日目覚めるのが楽しみで仕方ありません。ワクワクの種を抱えたまま眠りにつく。そんな夜の余韻を味わいながら、ベッドへ向かおうと思います。
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